とらドラ! 第1話「虎と竜」
2008/10/03/Fri
「今回よかったのは竜児が父母の写真を自分の机の引き出しのなかにもってたとこかな。彼が自分の父親似の顔をきらってて、そして今では家庭に欠如してる父性の存在にある種癒えがたい思いを抱いてることは、この作品を読み解くうえで大切な鍵となると思う。竜児の場合は、単純に好いてないということでないのが問題を微妙にしてるのだよね。表面上ではひどくきらってるようにふるまっても、父母の写真を手元においておいちゃう心性に、彼の孤独が影を落してる。こんなシーン、原作にあったかな。夜中ひとりで父と母の寄り添う写真に目を落とす彼というのは、竜児という人となりを象徴してると思う。彼の複雑な心性を、単純に描写して余りある。」
「家族ほど性的な関係はない、というのかしらね。ま、親子の関係なんてだれも偉そうにいえるものではないし、訓示を垂れるような人があるなら、その関係性は嘘なのよ。親子や恋人というのは、単純な好悪で分割できかねる関係だというのが、その定義の第一義としてあってよいのでしょうね。竜児が父親を憎んでるというのはけっこう健全なことよ。ま、それが彼の日常に隠微に作用してるというのがいちばんの問題なのでしょうけど。」
「人付きあいを厭う傾向のよるところ、かな。顔がこわいからというのは言い訳にすぎなくて、積極的に人と関係することに意味を見出せてないというのが竜児という人の本性であって、それをどうにか変革してこうってがんばるのが、「とらドラ!」って作品のとても興味ある側面だと思う。ただ原作だと、今はちょっと竜児があまりに頑なで、挫折気味のテーマではあるのだけれど。ここはアニメはどう描いてくのかな。一見してテンプレのようで、実は複雑な人間心理に着目した点が、とらドラのラノベにして稀有な価値を秘める理由だと思う。竜児とみのりんが、たぶんこの作品の魅力の成す大きな要素なのだろな。大河はわかりやすいから、愛しいって意味では、彼女がいちばんなのだけど、ね。大河の視点から見ると、本作はゆるせない部分たくさんかな。」
「ろくな目に遭わないのよね、大河は。朝目覚めて食事を竜児が用意しているラストの場面なんて、彼女にとっては泣けるものがあるかしら。ある意味、大河は家族幻想に飢えていただけではあるのよね。それがこの物語において、満たされるかどうかは怪しいところなのが、なんとも辛いかしら。」
「ある意味「ひだまりスケッチ」とかとは対極ともいえるのかもかな。ひとりきりで孤独に生きてきて、そしてこれから友だちが増えるであろう大河だけれど、彼女の本質の部分に踏みこめた人は、まだ原作の観点からだけど、いないのでないかなって私は思う。竜児はまるで方向を見失っちゃってるし、みのりんは半ばあきらめてる。救いなのが亜美さんだけれど、彼女はたぶん、一歩手前のとこで踏みとどまっちゃう人かなって気がする。そういう見方からいえばこの作品はシビアであって、私はそこにだいぶ苦さをおぼえちゃってるかなって白状する。原作はもう袋小路なのでないかなって私は思っちゃうのだけど、でも、打開できるのかな。そこは、すごくわかんない。竜児という人が迷いを払拭できる人なのか、私にはとても確信がもてないから。そこに、あきらめをおぼえちゃうから。」
「はてさて。一話にしてはまたずいぶんと作品の内容に踏みこんだ感想かしらね。というか、原作前提なのがあれでしょうけど。ま、予想以上に印象強かった一話だったことよ。いろいろな想念に捕われてしまう作品ね。本当、考えさせられる内容よ、まったく。」
→竹宮ゆゆこ「とらドラ!」1巻
「家族ほど性的な関係はない、というのかしらね。ま、親子の関係なんてだれも偉そうにいえるものではないし、訓示を垂れるような人があるなら、その関係性は嘘なのよ。親子や恋人というのは、単純な好悪で分割できかねる関係だというのが、その定義の第一義としてあってよいのでしょうね。竜児が父親を憎んでるというのはけっこう健全なことよ。ま、それが彼の日常に隠微に作用してるというのがいちばんの問題なのでしょうけど。」
「人付きあいを厭う傾向のよるところ、かな。顔がこわいからというのは言い訳にすぎなくて、積極的に人と関係することに意味を見出せてないというのが竜児という人の本性であって、それをどうにか変革してこうってがんばるのが、「とらドラ!」って作品のとても興味ある側面だと思う。ただ原作だと、今はちょっと竜児があまりに頑なで、挫折気味のテーマではあるのだけれど。ここはアニメはどう描いてくのかな。一見してテンプレのようで、実は複雑な人間心理に着目した点が、とらドラのラノベにして稀有な価値を秘める理由だと思う。竜児とみのりんが、たぶんこの作品の魅力の成す大きな要素なのだろな。大河はわかりやすいから、愛しいって意味では、彼女がいちばんなのだけど、ね。大河の視点から見ると、本作はゆるせない部分たくさんかな。」
「ろくな目に遭わないのよね、大河は。朝目覚めて食事を竜児が用意しているラストの場面なんて、彼女にとっては泣けるものがあるかしら。ある意味、大河は家族幻想に飢えていただけではあるのよね。それがこの物語において、満たされるかどうかは怪しいところなのが、なんとも辛いかしら。」
「ある意味「ひだまりスケッチ」とかとは対極ともいえるのかもかな。ひとりきりで孤独に生きてきて、そしてこれから友だちが増えるであろう大河だけれど、彼女の本質の部分に踏みこめた人は、まだ原作の観点からだけど、いないのでないかなって私は思う。竜児はまるで方向を見失っちゃってるし、みのりんは半ばあきらめてる。救いなのが亜美さんだけれど、彼女はたぶん、一歩手前のとこで踏みとどまっちゃう人かなって気がする。そういう見方からいえばこの作品はシビアであって、私はそこにだいぶ苦さをおぼえちゃってるかなって白状する。原作はもう袋小路なのでないかなって私は思っちゃうのだけど、でも、打開できるのかな。そこは、すごくわかんない。竜児という人が迷いを払拭できる人なのか、私にはとても確信がもてないから。そこに、あきらめをおぼえちゃうから。」
「はてさて。一話にしてはまたずいぶんと作品の内容に踏みこんだ感想かしらね。というか、原作前提なのがあれでしょうけど。ま、予想以上に印象強かった一話だったことよ。いろいろな想念に捕われてしまう作品ね。本当、考えさせられる内容よ、まったく。」
→竹宮ゆゆこ「とらドラ!」1巻