「ミルキィホームズ」二次創作 Aimez-vous cette fraîche volupté?
2011/05/24/Tue
とある日曜日の白い雲がゆっくりとたなびく穏やかな午後、私は久しぶりに一人で図書館を訪れていました。普段はいつも一緒だから気づかないけど、でも考えてみると、私たち四人の趣味ってバラバラです。ネロは朝早くからカマボコを連れて釣りに出かけたし、シャロは新鮮なカマボコ(ネコじゃない)を探しに行くとか張り切っていたし(荒れ狂う海に勇敢にも小舟で単独に乗り出したことのあるシャロです、何をしてもおかしくない)、コーデリアさんはお昼過ぎまでだらだら寝ていたと思ったら突然覚醒し、「梅雨こそ花々はその潤いをいや増すのよー!」とよくわからないことをいって、飛び出していってしまいました。また変なゾーンに入ってしまったんでしょうか……
ともかく、だからたまにはみんなが気ままに過す休みがあってもいいかなと思って、私は書棚に囲まれた静かな時間の流れる図書館にいました。いつもは生徒で賑わっている学院も、今日は人気もなく、図書館には世間から隔絶されたかのような落ち着きがありました。一冊の本を取った私は棚の並ぶ通路の奥まった角に置かれた椅子に腰を下ろし、ほっと一息ついてページをめくります。この学院に入学したときから、私はこの目立たない場所がお気に入りでした。あの頃の私はひどい人見知りで……いや今も人と話すのが苦手じゃなくなったわけじゃないですけど、でも昔はもっとひどかったんです……一人きりになれるこの場所に、私は愛着を持っていました。もちろん今はミルキィホームズのみんなといつも一緒で、四人と過す時間は苦手でもなんでもなくて、すごく好きなんですけど、……でもふと考えるんです、ここに来たばかりの頃は、私はずっと一人で、そんなじゃいけないと思っていてもどうしようもなくて、そしてそんな私を助けてくれたのがコーデリアさんだったことを。……考えると、ミルキィホームズのなかではコーデリアさんと一番長く友だちでいるんだなって気づいて、そのことがちょっと不思議な感じもします。
毎日が楽しくて、寂しさや退屈を感じる暇さえないような、充実した日々。こんな生活がこの学院で私に訪れるなんて、あの頃の私は考えもしなかった。……今日のようなうららかな午後、じっと本の文字を追っているとき、ふと我に返ることがあると、私はそんなことを考えてしまいます。この学院に孤独でいたときのことや、その心細さ、またコーデリアさんと二人で送った時間のことを、私はぼんやりと思い出してしまうんです。あれはいつのことだったかな……
それはコーデリアさんの部屋にお茶をお呼ばれしたある日、偶然に私はコーデリアさんの机におかれた写真立てに目がいってしまいました。人の部屋にある写真をじろじろ盗み見るなんて、はしたなくて、それになんだか卑怯なことをしているような感じがして、嫌だったんですけど、でもそのときの私はそれがやけに気にかかったんです。そこに架かっていたのは私より年下に見えるかわいらしい女の子の写真で、……私よりずっとかわいらしく見えて、私は目の前のコーデリアさんが一生懸命に話してくれている内容さえ、よくわからなくなってくるほどでした。程なくして、コーデリアさんはそんな私の上の空の様子に気づいたのか、どうしたのエリー?と尋ねてきます。それに私はどう答えるべきなのかわからなくて、ますます黙り込んじゃって、……私ってなんてダメなんだろう、今、思い出しても落ち込んでくる……
「その写真、マリーね。エリーには話してなかったかしら。」
「マリー……さん……?」
「そう。私の妹なの。私がここへ入学するきっかけをくれたの、マリーは。」
こういうときのコーデリアさんは妙に勘が鋭くて、私の視線の先にマリーさんの写真があることにすぐ気づき、そこからわけもなく私の気持を推し量ってくれたんです。コーデリアさんのこういうさり気ない気遣いはすごいなって思うし、その洞察力は本当に名探偵のようで驚きます。五感強化のトイズは私のよりずっと探偵っぽくて格好いいし(今はトイズがなくなっちゃって、コーデリアさん鈍いけど……)。
「マリーのことが気になるの、エリー?」
そういってコーデリアさんは意味深な微笑を浮べます。私はコーデリアさんにそんな表情をされるとなんだかどきどきしてきちゃって、頭のなかが真っ白になって、もう自分でも何をいっているのかわからなくなってしまいます。
「コ、コーデリアさんは私みたいな子にも、妹のようにやさしくしてくれてます……!」
「あら、エリー。それはちがうでしょう? エリーは私の妹じゃないじゃない。」
「あ、そ、そうですよね……」
「妹じゃなくて、もっと……」
「も、もっと……」
「大切な……」
いつの間にか擦り寄っていたコーデリアさんは私の頬に手を当て、そして赤くなって上手くコーデリアさんを見つめられない私にゆっくりと身を近づけてきたのでした。コーデリアさんの顔が傾いて、そのきれいな前髪が私の額に柔らかく当って、鼓動が聞こえるほど近く、二人の息が微かに肌に湿っぽく感じられ……
「わわわわー!!」
シーンと静まり返っていた図書館に、私の叫びがこだましました。途端に周囲の人の視線が私に向けられ、私は恥ずかしさのあまり、か細い声でごめんなさい……!とつぶやいて、図書館から急いで逃げ去りました。きっと私の顔は赤くなっていると考えると、ますます赤くなってしまうんです。それは図書館に迷惑をかけたからだけでなく、きっといろいろと変なことまで思い出してしまったから。……今夜、みんなで一緒のベッドに眠るのが、なんだか私には微妙にためらわれる思いがするのでした。
ともかく、だからたまにはみんなが気ままに過す休みがあってもいいかなと思って、私は書棚に囲まれた静かな時間の流れる図書館にいました。いつもは生徒で賑わっている学院も、今日は人気もなく、図書館には世間から隔絶されたかのような落ち着きがありました。一冊の本を取った私は棚の並ぶ通路の奥まった角に置かれた椅子に腰を下ろし、ほっと一息ついてページをめくります。この学院に入学したときから、私はこの目立たない場所がお気に入りでした。あの頃の私はひどい人見知りで……いや今も人と話すのが苦手じゃなくなったわけじゃないですけど、でも昔はもっとひどかったんです……一人きりになれるこの場所に、私は愛着を持っていました。もちろん今はミルキィホームズのみんなといつも一緒で、四人と過す時間は苦手でもなんでもなくて、すごく好きなんですけど、……でもふと考えるんです、ここに来たばかりの頃は、私はずっと一人で、そんなじゃいけないと思っていてもどうしようもなくて、そしてそんな私を助けてくれたのがコーデリアさんだったことを。……考えると、ミルキィホームズのなかではコーデリアさんと一番長く友だちでいるんだなって気づいて、そのことがちょっと不思議な感じもします。
毎日が楽しくて、寂しさや退屈を感じる暇さえないような、充実した日々。こんな生活がこの学院で私に訪れるなんて、あの頃の私は考えもしなかった。……今日のようなうららかな午後、じっと本の文字を追っているとき、ふと我に返ることがあると、私はそんなことを考えてしまいます。この学院に孤独でいたときのことや、その心細さ、またコーデリアさんと二人で送った時間のことを、私はぼんやりと思い出してしまうんです。あれはいつのことだったかな……
それはコーデリアさんの部屋にお茶をお呼ばれしたある日、偶然に私はコーデリアさんの机におかれた写真立てに目がいってしまいました。人の部屋にある写真をじろじろ盗み見るなんて、はしたなくて、それになんだか卑怯なことをしているような感じがして、嫌だったんですけど、でもそのときの私はそれがやけに気にかかったんです。そこに架かっていたのは私より年下に見えるかわいらしい女の子の写真で、……私よりずっとかわいらしく見えて、私は目の前のコーデリアさんが一生懸命に話してくれている内容さえ、よくわからなくなってくるほどでした。程なくして、コーデリアさんはそんな私の上の空の様子に気づいたのか、どうしたのエリー?と尋ねてきます。それに私はどう答えるべきなのかわからなくて、ますます黙り込んじゃって、……私ってなんてダメなんだろう、今、思い出しても落ち込んでくる……
「その写真、マリーね。エリーには話してなかったかしら。」
「マリー……さん……?」
「そう。私の妹なの。私がここへ入学するきっかけをくれたの、マリーは。」
こういうときのコーデリアさんは妙に勘が鋭くて、私の視線の先にマリーさんの写真があることにすぐ気づき、そこからわけもなく私の気持を推し量ってくれたんです。コーデリアさんのこういうさり気ない気遣いはすごいなって思うし、その洞察力は本当に名探偵のようで驚きます。五感強化のトイズは私のよりずっと探偵っぽくて格好いいし(今はトイズがなくなっちゃって、コーデリアさん鈍いけど……)。
「マリーのことが気になるの、エリー?」
そういってコーデリアさんは意味深な微笑を浮べます。私はコーデリアさんにそんな表情をされるとなんだかどきどきしてきちゃって、頭のなかが真っ白になって、もう自分でも何をいっているのかわからなくなってしまいます。
「コ、コーデリアさんは私みたいな子にも、妹のようにやさしくしてくれてます……!」
「あら、エリー。それはちがうでしょう? エリーは私の妹じゃないじゃない。」
「あ、そ、そうですよね……」
「妹じゃなくて、もっと……」
「も、もっと……」
「大切な……」
いつの間にか擦り寄っていたコーデリアさんは私の頬に手を当て、そして赤くなって上手くコーデリアさんを見つめられない私にゆっくりと身を近づけてきたのでした。コーデリアさんの顔が傾いて、そのきれいな前髪が私の額に柔らかく当って、鼓動が聞こえるほど近く、二人の息が微かに肌に湿っぽく感じられ……
「わわわわー!!」
シーンと静まり返っていた図書館に、私の叫びがこだましました。途端に周囲の人の視線が私に向けられ、私は恥ずかしさのあまり、か細い声でごめんなさい……!とつぶやいて、図書館から急いで逃げ去りました。きっと私の顔は赤くなっていると考えると、ますます赤くなってしまうんです。それは図書館に迷惑をかけたからだけでなく、きっといろいろと変なことまで思い出してしまったから。……今夜、みんなで一緒のベッドに眠るのが、なんだか私には微妙にためらわれる思いがするのでした。