「ミルキィホームズ」二次創作 ~シャロとかまぼこチャーハン~
2012/02/28/Tue
「できました! かまぼこチャーハンです!!」
「素敵! 可憐! ファビュラスマックス!!」
調理実習であまった食材を好きに使っていい。……アンリエットさんのその言葉を聞いた私とシャロは取るものもとらず、まさしく一心不乱に調理室へと向かい、そしてそこでこの世のどんな金銀きらめく財宝もかくやとばかりに私たちを魅了する食材という希望を見出したのだった。
「本当すごい! こんな人間らしい食事にありつけるなんてまったくこの世は天国かしら!? もうシャロったらチャーハンなんて作れたのね! コーデリアお姉さんすごく驚いちゃった! ……シャロがミルキィホームズの仲間で本当によかったって、今、私、心の底から、思っているのよっ。感動しちゃった!」
「えへへ……、私、かまぼこのことなら大抵おいしくできちゃうんですー」
いっていることの意味はよくわからないけど、さすが荒れ狂う海にかまぼこを求め、単身、船出に挑んだ実績のあるシャロだ。事かまぼこに関しては、彼女の言葉は鉛よりも重く響く、圧倒的な説得力に満ちている。
「うーん……でも、ネロとエリーがいないのは残念ね。二人ともバイトだからしかたないけど……」
「ネロはエリーさんの儲けを1.1倍にする秘策があるっていってました!」
「すごい! 1.1倍ってなんだか言い方が難しくてよくわかんないけどきっとすごいのね! すごいのはわかる! すごい!!」
出来立てのかまぼこチャーハンからは香ばしい匂いが漂い、正直、今すぐ食べたかったけれど、でもエリーとネロに黙って先に食べるのもなんだか悪い気がしたから(といっても、ネロにはそんなに悪い気はしなかったけど)、二人が帰ってきてから、夕飯に食べようとシャロと決めた。チャーハンをお皿に移してラップをする。
「……けどそれなら、二人が帰ってきてから料理してもよかったかしら。そのほうがおいしく食べられただろうし……」
「……そうかもしれないですけど、でも、私は楽しかったです!」
「え?」
シャロの言葉の意味がよくわからない。不思議に思って、私がシャロへ振り向くと、
「だって、コーデリアさんと二人きりで料理できましたから」
なんて、予想だにしない返事をシャロは笑顔で私に返した。――思いがけなかったシャロのその言葉と静かな微笑みに、私はたまらず視線を逸らす。
「い、いつも一緒にいるじゃない。シャロも私も……」
「でも、さいきん、コーデリアさん……」
「何……?」
「この前……いえ……」
珍しくシャロの歯切れが悪い。うつむきかけた彼女を不安に思い、私が手を伸ばすと、シャロはその手を両手でつかみ……その力が思いのほか強くて、私は自分よりずっと小さな彼女に引き寄せられ……、
「コーデリアさん、この前、ネロとキスしてました」
まっすぐに射抜く視線でもって、私にそう伝えていた。
「だから、私――」
シャロの言葉。私の動揺。握られる私の手。引き寄せられる私の身体。――覚えているのは、シャロが精一杯の勇気を込めて、私に口づけをしたということだけだった。……甘く切ない感触が、私の鼓動をかき乱す。
「えへへ……、コーデリアさんと、キス、しました」
「シャ、シャロ……?」
「コーデリアさん……ごめんなさい……」
それだけを口にし、シャロはチャーハンの盛ったお皿を持って、調理室から駆け足で出て行く。一人取り残された私は、何も考えることができず、ただしばらく呆けてしまい、それからシャロを追いかけなくちゃ!と慌てて気づいた。……そして調理室を飛び出そうと床を蹴った瞬間――なんたる不幸――足がつるっと滑って、私の身体は宙に舞い、それだけならまだしもなんてことだろう、シャロがチャーハンを作っている横で私がせっせと作っていたおみそ汁の鍋に、驚くことなかれ、私は頭から突っ込んだのである!
「――!?」
熱い。言葉にならないほど熱い。その熱さに頭が焼かれて、しかも鉄の鍋に頭をぶつけた衝撃で、さらに私は床に激突し、辺り一面にみそ汁をばらまき、おまけにそのせいで滑りやすくなった床を無抵抗の私の身体はごろんごろんと転がり、痛みでのた打ち回る私の腕や足はまな板や包丁を衝撃で無残に落下させ、それらはことごとく鍋を被ったままの私の頭部に集中的にクリティカルヒットしたのである。――悲惨というほかない、すべての混乱とダメージから回復し、文字通りぼろぼろになった私がなんとか立ち上がったときには、そこにシャロは当たり前だがもう影も形も見えなかった。……みそのにおいが髪に浸み込んで、着ている服もびしょ濡れで、散乱した調理器具を目の前にし、無性に私は泣きたくなった。
「素敵! 可憐! ファビュラスマックス!!」
調理実習であまった食材を好きに使っていい。……アンリエットさんのその言葉を聞いた私とシャロは取るものもとらず、まさしく一心不乱に調理室へと向かい、そしてそこでこの世のどんな金銀きらめく財宝もかくやとばかりに私たちを魅了する食材という希望を見出したのだった。
「本当すごい! こんな人間らしい食事にありつけるなんてまったくこの世は天国かしら!? もうシャロったらチャーハンなんて作れたのね! コーデリアお姉さんすごく驚いちゃった! ……シャロがミルキィホームズの仲間で本当によかったって、今、私、心の底から、思っているのよっ。感動しちゃった!」
「えへへ……、私、かまぼこのことなら大抵おいしくできちゃうんですー」
いっていることの意味はよくわからないけど、さすが荒れ狂う海にかまぼこを求め、単身、船出に挑んだ実績のあるシャロだ。事かまぼこに関しては、彼女の言葉は鉛よりも重く響く、圧倒的な説得力に満ちている。
「うーん……でも、ネロとエリーがいないのは残念ね。二人ともバイトだからしかたないけど……」
「ネロはエリーさんの儲けを1.1倍にする秘策があるっていってました!」
「すごい! 1.1倍ってなんだか言い方が難しくてよくわかんないけどきっとすごいのね! すごいのはわかる! すごい!!」
出来立てのかまぼこチャーハンからは香ばしい匂いが漂い、正直、今すぐ食べたかったけれど、でもエリーとネロに黙って先に食べるのもなんだか悪い気がしたから(といっても、ネロにはそんなに悪い気はしなかったけど)、二人が帰ってきてから、夕飯に食べようとシャロと決めた。チャーハンをお皿に移してラップをする。
「……けどそれなら、二人が帰ってきてから料理してもよかったかしら。そのほうがおいしく食べられただろうし……」
「……そうかもしれないですけど、でも、私は楽しかったです!」
「え?」
シャロの言葉の意味がよくわからない。不思議に思って、私がシャロへ振り向くと、
「だって、コーデリアさんと二人きりで料理できましたから」
なんて、予想だにしない返事をシャロは笑顔で私に返した。――思いがけなかったシャロのその言葉と静かな微笑みに、私はたまらず視線を逸らす。
「い、いつも一緒にいるじゃない。シャロも私も……」
「でも、さいきん、コーデリアさん……」
「何……?」
「この前……いえ……」
珍しくシャロの歯切れが悪い。うつむきかけた彼女を不安に思い、私が手を伸ばすと、シャロはその手を両手でつかみ……その力が思いのほか強くて、私は自分よりずっと小さな彼女に引き寄せられ……、
「コーデリアさん、この前、ネロとキスしてました」
まっすぐに射抜く視線でもって、私にそう伝えていた。
「だから、私――」
シャロの言葉。私の動揺。握られる私の手。引き寄せられる私の身体。――覚えているのは、シャロが精一杯の勇気を込めて、私に口づけをしたということだけだった。……甘く切ない感触が、私の鼓動をかき乱す。
「えへへ……、コーデリアさんと、キス、しました」
「シャ、シャロ……?」
「コーデリアさん……ごめんなさい……」
それだけを口にし、シャロはチャーハンの盛ったお皿を持って、調理室から駆け足で出て行く。一人取り残された私は、何も考えることができず、ただしばらく呆けてしまい、それからシャロを追いかけなくちゃ!と慌てて気づいた。……そして調理室を飛び出そうと床を蹴った瞬間――なんたる不幸――足がつるっと滑って、私の身体は宙に舞い、それだけならまだしもなんてことだろう、シャロがチャーハンを作っている横で私がせっせと作っていたおみそ汁の鍋に、驚くことなかれ、私は頭から突っ込んだのである!
「――!?」
熱い。言葉にならないほど熱い。その熱さに頭が焼かれて、しかも鉄の鍋に頭をぶつけた衝撃で、さらに私は床に激突し、辺り一面にみそ汁をばらまき、おまけにそのせいで滑りやすくなった床を無抵抗の私の身体はごろんごろんと転がり、痛みでのた打ち回る私の腕や足はまな板や包丁を衝撃で無残に落下させ、それらはことごとく鍋を被ったままの私の頭部に集中的にクリティカルヒットしたのである。――悲惨というほかない、すべての混乱とダメージから回復し、文字通りぼろぼろになった私がなんとか立ち上がったときには、そこにシャロは当たり前だがもう影も形も見えなかった。……みそのにおいが髪に浸み込んで、着ている服もびしょ濡れで、散乱した調理器具を目の前にし、無性に私は泣きたくなった。