Je triomphe et je survis. #13
2012/07/31/Tue
嫌なこと思い出した、と私は思った。高校二年の秋の思い出は、今でも私につらい感情を思い起こさせる。特に演劇部の人たちには本当にひどいことをしたと時間が経つにつれ、ますます強くそう考えるようになった。あれからずいぶん時間が過ぎたけれど、お姉さんと過ごしたあの秋の夜のことは、今でもため息をつかずには考えることができない。
そんなことをつらつら思いながら、私はシャルルドゴール通りに位置するリヨン現代美術館にバスを乗り継いでやってきた。基本的に私は美術についてそれほど知識がないんだけれど、この現代美術館は以前リヨンに来たときには寄らなかったので、今回はぜひ見学していこうと考えていた。美術館の建物の周囲にはもうぱっと見てはなんのオブジェかよくわからない作品の数々が所狭しと展示されている。私はそれらを潜り抜け、美術館のなかへと入った。
現代美術はよくわからない。いや、現代美術に限るわけじゃなく、私は美術に関する素養がないけれど、でも現代芸術は単純にきれいや見事だといった言葉で感想をいうのが難しいといった印象を受ける。いうなれば、よくわからない得体の知れないものを見てしまったというような、言葉にならない衝撃を受けるのが、現代美術のおもしろさといえるのかもしれない。そして、そういった言葉にならない感覚をなんとか言葉にしようと頭を働かす。それはそれで楽しいことかもしれないと私は思った。
奥に進むと、ある映像を流している部屋があった。その映像はある病院の研究室を映している。白衣をまとった四十代と思しい先生がある病気の説明をしている。そして次のシーンではその病気の患者らしい子どもの姿が映される。と思ったらすぐに画面が変わった。これは切開した人間の内臓の部分だろうか。よくわからない。赤い肉の色が画面全体に映っている。薄暗い室内でこういう映像が流れるテレビを中央にどんと置いているところが、この部屋のテーマなんだろうか。まるでホラー映画のワンシーンみたいと私は思った。自分でも無意識のうちに、私は三十分以上、その映像に見入ってしまった。
心がざわついてくる。どこの美術館に行ってもくたくたに疲れるものだけれど、特に現代美術を扱った美術館は精神をいつも以上に消耗させる気がする。性や死の暗喩が露骨だからだろうか。私は美術館の外に出て、はあっと息を吐いた。
おみやげコーナーを覗きに行く。すると画集やよくわからないオブジェのキーホルダーに混じって、アニメ調の絵葉書があった。日本のアニメのようなかわいらしい女の子の絵が描かれている。日本で買ったといっても信じてもらえそうと私は思った。せっかくなので二、三枚購入する。
それから私はまたバスに乗って、Part Dieuを目指す。車の振動に揺られながら、私はまた高校時代を思い出し始める……
そんなことをつらつら思いながら、私はシャルルドゴール通りに位置するリヨン現代美術館にバスを乗り継いでやってきた。基本的に私は美術についてそれほど知識がないんだけれど、この現代美術館は以前リヨンに来たときには寄らなかったので、今回はぜひ見学していこうと考えていた。美術館の建物の周囲にはもうぱっと見てはなんのオブジェかよくわからない作品の数々が所狭しと展示されている。私はそれらを潜り抜け、美術館のなかへと入った。
現代美術はよくわからない。いや、現代美術に限るわけじゃなく、私は美術に関する素養がないけれど、でも現代芸術は単純にきれいや見事だといった言葉で感想をいうのが難しいといった印象を受ける。いうなれば、よくわからない得体の知れないものを見てしまったというような、言葉にならない衝撃を受けるのが、現代美術のおもしろさといえるのかもしれない。そして、そういった言葉にならない感覚をなんとか言葉にしようと頭を働かす。それはそれで楽しいことかもしれないと私は思った。
奥に進むと、ある映像を流している部屋があった。その映像はある病院の研究室を映している。白衣をまとった四十代と思しい先生がある病気の説明をしている。そして次のシーンではその病気の患者らしい子どもの姿が映される。と思ったらすぐに画面が変わった。これは切開した人間の内臓の部分だろうか。よくわからない。赤い肉の色が画面全体に映っている。薄暗い室内でこういう映像が流れるテレビを中央にどんと置いているところが、この部屋のテーマなんだろうか。まるでホラー映画のワンシーンみたいと私は思った。自分でも無意識のうちに、私は三十分以上、その映像に見入ってしまった。
心がざわついてくる。どこの美術館に行ってもくたくたに疲れるものだけれど、特に現代美術を扱った美術館は精神をいつも以上に消耗させる気がする。性や死の暗喩が露骨だからだろうか。私は美術館の外に出て、はあっと息を吐いた。
おみやげコーナーを覗きに行く。すると画集やよくわからないオブジェのキーホルダーに混じって、アニメ調の絵葉書があった。日本のアニメのようなかわいらしい女の子の絵が描かれている。日本で買ったといっても信じてもらえそうと私は思った。せっかくなので二、三枚購入する。
それから私はまたバスに乗って、Part Dieuを目指す。車の振動に揺られながら、私はまた高校時代を思い出し始める……