ZUN、秋★枝「東方儚月抄 Silent Sinner in Blue.」上巻
2008/04/09/Wed
「東方儚月抄コミクス上巻。やっぱり儚月抄のお話はまとめて一気に読んだほうがずっとわかりやすい。わかりやすい、といっても登場人物間の関係とかこの人がどんな性格なのかーとかアポロ計画がそろそろ幻想入りしてるとは何ごとかーとか、そのへんのフォローはぜんぜんなくて、思ったとおり東方知らない人がぼんやり片手に読むのに適しない。東方が未見の人にはちょっと楽しむよになれるのはめんどくさいというのは、東方に限っていえばよくいわれることだけど、有名になってもこのスタイルをぜんぜん崩さないのは、なかなかどうしてひとつのかっこよさになってるなって思わないこともないのだ。まんが一冊しっかり出されるというのはすごいかな。読みにくいといえば、それは否定できない作品かなとは思うけど。」
「意味ありげな態度と含蓄ありそうな台詞の応酬だものね。そのうえストーリーが劇的に進行しているような印象も、この巻ではとくに見当らないから、そこらはけっこう難儀かしらね。登場人物のだれもが地に足のついていないというのが問題なのでしょうけど。二つの意味で。」
「あはは。みんな余裕ありげで動揺なくて、なんだか無敵ぽくすごそにふるまってるけど、でも実はただ何も考えてなくてぼんやり生きてたらたいへんなことになってたけど、でもそののん気加減は変わらなかった、というのが東方のおもしろいとこ。まっとうにがんばるような人はひとりもいなくて、その本心をつかむにはだれもが遠いとこにふらふらしてる。‥ある意味、東方の人たちは意図的に感情移入をさせないように描かれてるなんていえるかな。それはこの儚月抄でもまったく同じで、この物語には読者はだれに感情移入して読めばいいかがわからない。というか読者の理解自体をそもそもはぐらかすよな、ほのめかしや含みある笑顔にあふれてて、まったくそういったとこではやさしくない。飄々とした登場人物たちは孤高に、その実何も深刻に考えることなくて、いつのまにやら重大な展開が終ってる。それはもう幻想郷独特の法則ですべてに片がつくかのように。‥主人公の霊夢からしてわかりにくいよね。もっとも彼女の場合は素直すぎるにもほどがあるために、見えにくくなる部分が大なのだけど。そこが魅力であるし、一筋縄でいかないとこでもあるのかな。」
「月進攻を企てる吸血鬼、境界の妖怪、オモイカネに西行の幽霊、か。本当、雑然としてることね。これらすべてを包含する幻想郷の世界観はやはりほかに類を見ないかしらね。そこで紡がれる物語が一筋縄で行かないのも、ま、当然といえば当然かしらね。」
「幻想郷はすべてを受け容れる、それはとても残酷な話、というのかな。人と妖怪の境界は、夢と現のちがいほども明瞭でない。それは浅い眠りから覚めた人間が、夢のなかの花弁に狂おしく飛翔した蝶の儚い姿こそが、自分のほんとの現実だと錯覚するほどに。裏の月こそ人知の到達せざる神秘に満ちた理想郷のひとつの飽和した結論だった。現代の幻想物語。次巻もまた楽しみです。」
「だれもがだれもの思惑を見透かしているようで、そして掌中で弄ばれているようにも見える。はてさて、この話はどういった方向に進むのかしら。その先があまりに見えない。これはまったくつづきを楽しみにするほかないというものかしら。次巻が出るまでは、ゆっくりとこの幻想に酔いしれるとしましょうか。それが人のせめてのすさびなのでしょうから。」
『春風の花をちらすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり』
西行
ZUN、秋★枝「東方儚月抄 Silent Sinner in Blue.」上巻
「意味ありげな態度と含蓄ありそうな台詞の応酬だものね。そのうえストーリーが劇的に進行しているような印象も、この巻ではとくに見当らないから、そこらはけっこう難儀かしらね。登場人物のだれもが地に足のついていないというのが問題なのでしょうけど。二つの意味で。」
「あはは。みんな余裕ありげで動揺なくて、なんだか無敵ぽくすごそにふるまってるけど、でも実はただ何も考えてなくてぼんやり生きてたらたいへんなことになってたけど、でもそののん気加減は変わらなかった、というのが東方のおもしろいとこ。まっとうにがんばるような人はひとりもいなくて、その本心をつかむにはだれもが遠いとこにふらふらしてる。‥ある意味、東方の人たちは意図的に感情移入をさせないように描かれてるなんていえるかな。それはこの儚月抄でもまったく同じで、この物語には読者はだれに感情移入して読めばいいかがわからない。というか読者の理解自体をそもそもはぐらかすよな、ほのめかしや含みある笑顔にあふれてて、まったくそういったとこではやさしくない。飄々とした登場人物たちは孤高に、その実何も深刻に考えることなくて、いつのまにやら重大な展開が終ってる。それはもう幻想郷独特の法則ですべてに片がつくかのように。‥主人公の霊夢からしてわかりにくいよね。もっとも彼女の場合は素直すぎるにもほどがあるために、見えにくくなる部分が大なのだけど。そこが魅力であるし、一筋縄でいかないとこでもあるのかな。」
「月進攻を企てる吸血鬼、境界の妖怪、オモイカネに西行の幽霊、か。本当、雑然としてることね。これらすべてを包含する幻想郷の世界観はやはりほかに類を見ないかしらね。そこで紡がれる物語が一筋縄で行かないのも、ま、当然といえば当然かしらね。」
「幻想郷はすべてを受け容れる、それはとても残酷な話、というのかな。人と妖怪の境界は、夢と現のちがいほども明瞭でない。それは浅い眠りから覚めた人間が、夢のなかの花弁に狂おしく飛翔した蝶の儚い姿こそが、自分のほんとの現実だと錯覚するほどに。裏の月こそ人知の到達せざる神秘に満ちた理想郷のひとつの飽和した結論だった。現代の幻想物語。次巻もまた楽しみです。」
「だれもがだれもの思惑を見透かしているようで、そして掌中で弄ばれているようにも見える。はてさて、この話はどういった方向に進むのかしら。その先があまりに見えない。これはまったくつづきを楽しみにするほかないというものかしら。次巻が出るまでは、ゆっくりとこの幻想に酔いしれるとしましょうか。それが人のせめてのすさびなのでしょうから。」
『春風の花をちらすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり』
西行
ZUN、秋★枝「東方儚月抄 Silent Sinner in Blue.」上巻
