とらドラ! 第10話「花火」
2008/12/04/Thu
「こうくるとむずかしいな、と思う。この回だけで判じちゃうならたぶんみのりんと竜児の二人というのはそうわるくない関係になれるのでないかなって気がもてちゃうのだけど、でもそう私にはいい切れない何かがあって、それは今回亜美さんがいったような「実乃梨ちゃんは太陽で竜児は月だから」といったことでないのが微妙なところ。この人を太陽と月にわける考えは、けっこうたまにきくものであるかな。自分自身で輝けてその魅力で他者を引っぱることができるのが太陽型の人で、素敵なだれかのそばにあることではじめて真価を発揮することができるのが月型の人。それで、私はこの二分割にはあんまり賛成もしないのだけど、でもあえて則っていうならみのりんを太陽っていっちゃうのはまったくちがうんじゃないかなって思うかな。たぶんこの時点ではまだ亜美さんもみのりんを見ぬけてなくて、ここでみのりんの評価を見誤ってたことがのちに二人の断絶につながってくのは原作の展開(→竹宮ゆゆこ「とらドラ8!」)。みのりんは、たぶん見た目には想像できないくらいに根は暗いんだよね。逆にいえば彼女がふだんあんなふうに道化を装って生活してるのは、魅せたい自分を演じてるからであって、彼女の本心の奥底に何がわだかまってるかはまだだれも覗けてない。それを竜児が救えてあげる? 私には、彼にそこまで期待できないかな。もちろん、これは相性という問題以上の厄介さがあるのは否定できないけど。」
「実乃梨は月でもまして太陽でもないのでしょうね。こういってはなんでしょうけど、彼女は自分を自分自身の力で輝ける太陽だと「他人に思われたい」のよ。そしてその願望のとおりに振舞ってしまい、そこから先の、他者との交流が望めないのよ。さらにもう少し言及するなら、実乃梨は正直なところでは大河を自分の太陽にしたかったのであり、それが挫折したのが現状であるのよ。ま、厄介な子よね。ここまで厄介な人間は久しぶりに見たというくらいに、実乃梨は一筋縄で行かない子よ。」
「困っちゃう、かな。それに比べると亜美さんはずっとわかりやすくてかわいいよね。竜児のやさしさに期待しちゃうとこなんて、とても繊細で、私は好ましい。でもたぶんその繊細な彼女の機微を見逃しちゃうのが竜児であって、竜児を得ようと思うなら、たぶん亜美さんはこの夏休みの前後でもっと能動的に彼に働きかける必要があったのだろなって思うかな。このお話ではけっこう明瞭だけど、亜美さんは竜児に身体的なアプローチを小まめにかけてるのだよね。それで、竜児は気づいてなかったと思うけど、過去ストーカーにあった亜美さんがたとえいたずらであろうとそういう肉体的なあそびを心がけようと思うのは、やっぱりよほどのことであるって考えなきゃいけないじゃない。亜美さんはもちろんプールのときとかで大衆に向けてナルシシズムを満足させちゃうことがあるのはたしかだけど、対個人にアピールすることは実は皆無なのだよね。だから竜児はそうとう、自分で思ってる以上に亜美さんには好かれてた。‥過去形になっちゃうのが、あれれかな。」
「反応に乏しいのが竜児といえども、か。はてさてね。あけすけな言い方をすれば、亜美さんは竜児の眼中になかったといってしまってもいいのでしょう。そしてまたここで微妙なのが大河の存在であり、大河を彼は果してこの夏休みの時点ではどう認識していたのか?という問題がなかなかどうして、むずかしいのよね。おそらくこのときは恋愛を意識して思っているのは実乃梨だけだったのでしょうし、それは極限まで行かなきゃ変わらない竜児という人間の特徴だったのでしょうが、しかしさて、竜児の行動の基本にはまず大河はいるのよね。というか、むしろ大河はもう彼の生活にいて当り前の存在だった。ここが微妙なのでしょう。」
「そしてみのりんも大河は無視できないくらい大きな存在であるから、かな。‥こういっちゃうと不味いかなだけど、あえていっちゃえ、たぶん竜児は大河を娘としてみのりんと結ばれたかった。そしてそれはみのりんの願望でもあった。でも、「大河はそれを裏切った」。それが、たぶん、この作品の凄絶な決断だった。」
「大河を独り立ちさせたくない心理? はてさて、恐ろしいものね。実乃梨も竜児も、なかなか簡単に行かない心理の人間よ。いや、人間とはそもそもそういった複雑性の存在である、か。ま、そういえばそうなのでしょうがね。」
→「とらドラ!」雑感 嘘の囚われ人としての実乃梨
→自尊心の処理の問題 「とらドラ!」と「山月記」に寄せて
「実乃梨は月でもまして太陽でもないのでしょうね。こういってはなんでしょうけど、彼女は自分を自分自身の力で輝ける太陽だと「他人に思われたい」のよ。そしてその願望のとおりに振舞ってしまい、そこから先の、他者との交流が望めないのよ。さらにもう少し言及するなら、実乃梨は正直なところでは大河を自分の太陽にしたかったのであり、それが挫折したのが現状であるのよ。ま、厄介な子よね。ここまで厄介な人間は久しぶりに見たというくらいに、実乃梨は一筋縄で行かない子よ。」
「困っちゃう、かな。それに比べると亜美さんはずっとわかりやすくてかわいいよね。竜児のやさしさに期待しちゃうとこなんて、とても繊細で、私は好ましい。でもたぶんその繊細な彼女の機微を見逃しちゃうのが竜児であって、竜児を得ようと思うなら、たぶん亜美さんはこの夏休みの前後でもっと能動的に彼に働きかける必要があったのだろなって思うかな。このお話ではけっこう明瞭だけど、亜美さんは竜児に身体的なアプローチを小まめにかけてるのだよね。それで、竜児は気づいてなかったと思うけど、過去ストーカーにあった亜美さんがたとえいたずらであろうとそういう肉体的なあそびを心がけようと思うのは、やっぱりよほどのことであるって考えなきゃいけないじゃない。亜美さんはもちろんプールのときとかで大衆に向けてナルシシズムを満足させちゃうことがあるのはたしかだけど、対個人にアピールすることは実は皆無なのだよね。だから竜児はそうとう、自分で思ってる以上に亜美さんには好かれてた。‥過去形になっちゃうのが、あれれかな。」
「反応に乏しいのが竜児といえども、か。はてさてね。あけすけな言い方をすれば、亜美さんは竜児の眼中になかったといってしまってもいいのでしょう。そしてまたここで微妙なのが大河の存在であり、大河を彼は果してこの夏休みの時点ではどう認識していたのか?という問題がなかなかどうして、むずかしいのよね。おそらくこのときは恋愛を意識して思っているのは実乃梨だけだったのでしょうし、それは極限まで行かなきゃ変わらない竜児という人間の特徴だったのでしょうが、しかしさて、竜児の行動の基本にはまず大河はいるのよね。というか、むしろ大河はもう彼の生活にいて当り前の存在だった。ここが微妙なのでしょう。」
「そしてみのりんも大河は無視できないくらい大きな存在であるから、かな。‥こういっちゃうと不味いかなだけど、あえていっちゃえ、たぶん竜児は大河を娘としてみのりんと結ばれたかった。そしてそれはみのりんの願望でもあった。でも、「大河はそれを裏切った」。それが、たぶん、この作品の凄絶な決断だった。」
「大河を独り立ちさせたくない心理? はてさて、恐ろしいものね。実乃梨も竜児も、なかなか簡単に行かない心理の人間よ。いや、人間とはそもそもそういった複雑性の存在である、か。ま、そういえばそうなのでしょうがね。」
→「とらドラ!」雑感 嘘の囚われ人としての実乃梨
→自尊心の処理の問題 「とらドラ!」と「山月記」に寄せて