2009/01/29/Thu
「みのりんの罪悪感に関しては、彼女が見た目どおりの明るい天然な子というのでその本性は実はなくて、彼女という人はもっと根暗で、基本的には自分への自信のなさを常に意識して打ち消してるって心理を読みとることなくしては、なかなか理解しづらい部分だと思う。みのりんはいつも何かふざけて人の失笑を買うようなふるまいをしてるけれど、でもそれは彼女の本心からの働きでなくて、実はただの演技にすぎないんだよね。そうして考えると、みのりんという人は著しく不安定な自我を備えてるということがわかってくるし、また全体的に欝気味だった今回の彼女の様子をみても、みのりんが竜児が捉えてるような明るくてどんなときも前向きで‥という性格とはほんとは対極的な個性を有してることがわかってくるのじゃないかな。‥みのりんのもつ、暗さ。それを今わかってるのは亜美さんだけで、大河も竜児も‥竜児はとくにそかな。彼は自分の望む他者しか目に入れない。人のありのままの姿に、自分の理想を、投影してる‥気づけてない。それがみのりんの孤独をふかめるのに、どれだけ役立ってるかは、少し言葉にしにくいくらい。」
「実乃梨が暗い人だということを考えなければ、亜美の「罪悪感」という否定的な言葉の投げかけの微妙なニュアンスの真実は、なかなかどうして伝わってはこないのでしょうね。ま、これまでの彼女の行動を鑑みても、躁鬱の激しい心理的に安定しない人物ということを評定するのはそうおかしなことではないのでしょうけど、そこまで複雑で隠微な心理の人物をここまで繊細に描いてこれたことには、この作品を率直に感心するかしらね。実乃梨の罪悪感とは、いってみれば自己懲罰のそれでしかないのよ。彼女は自分を責めている。何によって責めているか。大河のこと、竜児のこと。あまりに彼女は自分の本音を明かしていないのよね。ま、明かせないのでしょうけど。」
「みのりんは自分を嘘つきだって見なしてて、それに負い目を感じてるから、かな。でも亜美さんが指摘するとおり、みのりんの罪悪感というのはいわば彼女の独善的な性質の発露ともとれないことはなくて、それくらいのことで友だちに気兼ねして、本音をいわず勝手に内にこもって悶々としてるのは、やはり大河や竜児に対するもっと明らかな裏切りであることは疑えないのじゃないかなって、私は思うかな。‥整理すると、みのりんは竜児に惹かれてる。そして大河に依存するほど拘泥してる。彼女は大河を裏切れない。裏切る自分をゆるせない。また竜児が自分に好意を向けてることも、たぶん彼女はかなり初期の段階で気づいてて、そしてその感情を受けとめることに、そうとう苦慮して煮詰まってる。‥みのりんの罪悪感の問題は、これはそうとうむずかしい。なかなか鮮明に彼女の心理を追うことは、骨の折れる課題であるかな。彼女という人の屈折した心理は、表面の笑顔からは推測できないほど、複雑に陰影を伴ったものであるだろうから。」
「わからない人よね。いや、これは実乃梨という人の性格や心理に私たちがただ疎いということもいえるのかしら。しかしこういった自分の気持を正直に表に出すことができず、その意味で自縄自縛の苦しみにさらされる人というのは、思っている以上に少なくはないのでしょうね。青春だの恋愛だのいうけれど、やはりこの作品の本質は非常に暗い底冷えのする人間心理の描写にこそあるのでしょう。実乃梨を見て、背筋が多少は冷えないかしら。彼女という人間はまったく自分の凡庸さに苦しみそれを打破しようと無駄に足掻く、滑稽な人間のカリカチュアにほかならないのよ。はてさて、どうなることかしらね。」
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竹宮ゆゆこ「とらドラ6!」→
竹宮ゆゆこ「とらドラ7!」→
「とらドラ!」雑感 嘘の囚われ人としての実乃梨
要するに、みのりは「仮面」を被ってこれまで生きてきたんですよね・・
でも、芸能界やモデル界で人の表裏を察しながら育ってきた亜美には簡単に見抜かれた・・と。
亜美はこれまで人々が望む姿を演じてきて、
そのストレスを裏で悪口を吐く事で心の平衡を保ってきた感があります。
竜児に諭され、素のまま生きていけるようになった亜美は人の心が見抜けるだけに、
それはそれで悲しい気もします。
自分の恋も成就しない事も早い段階で知ってしまってるんですから・・
2009-01-30 金 23:23:06 /URL /ポッピ /
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そう考えると。。。
毎回、文学的な洞察や表現に、驚いています。
トラドラに関するみのりんの分析もなるほどと関心させられるのですが、そもそもなぜみのりんは大河にそんなにも、拘泥しているんでしょうね?
みのりんにとっては、大河は一種の「神」のような崇拝してしまうような存在なのでしょうか?
みのりんの内面が実はとても根暗であるなら、ある意味真逆の個性である大河とどういう距離感というか、接し方に流れるのが自然かな?と考えてしまいます。
おそらく、大河をとても遠く距離を置いて離れるか、「自分とは違う素敵過ぎる不可侵な存在」と思い込んで崇拝するかの2通りしかないような気がするんです。
(どちらも、距離を置いているという点では同じ)
その時に、俺は離れる選択をする人の方が多いような気がするのに、みのりんは「崇拝」という選択をしています。
崇拝と言う選択をするには、なにか「きっかけ」がいるように思えるんですよね。
それが何なのかが最近気になります。
あと、大河がみのりんに対して向けている感情が何なのか?も最近きになりますね。
大河って相手の本質を「野生的なカン」で見抜ける子のような気がします。
そんな大河がみのりんの本質に気づかないと言う事はありえるんでしょうか?
本当に色々考えさせてくれる作品で、強く惹かれますね。
2009-01-31 土 01:52:22 /URL /拝読者 /
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>ポッピさん
どうも。
他者の前で演技したり、仮面をつけて本心を表に出さなかったりするのは、それはそれで社会で生きるためのひとつの必要欠くべからざる方途ですから、一概に悪いとはいえないのですよね。
ただ実乃梨の場合は、仮面をつけるべきでない、もしくはつけたくない相手に対して、誤魔化してしまったことが大きいのだろうと思います。
そんな実乃梨と対蹠なのが、たぶん亜美さんなのでしょうね。大河たちには本性丸出しみたいな。
2009-01-31 土 12:56:06 /
URL /石田麦 /
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>拝読者さん
どうも。
実乃梨が大河にこだわる理由は、たぶん北村と同じで、仮借ない、そしてそのために傷つく大河の生き方に恋のような感情を抱いたからだと思います。
その意味で大河というのはけっこう罪深いかも。
次に大河が実乃梨に向けている感情はなんなのか?といった問題はなかなか作品の構図の核心に迫るものがあると私は思っていて、のちのエピソードで亜美さんが指摘しますが、大河は「家族」がやりたいんですよ。
竜児と実乃梨と自分とで。それでみずからの家族の現状の補填をしようとしてるのかなと、私は思いますが、これはけっこう切ない。
そして、竜児と実乃梨も大河のその企てに乗ってきたのが実はこれまでの話であり、しかしその歪な関係性の無理が生じて崩壊してくのが、これからのエピソードなのだろうと思います。
2009-01-31 土 13:05:11 /
URL /石田麦 /
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なるほどー
石田麦さん
丁寧な返事ありがとうございます。
>大河の生き方に恋のような感情を抱いた
やっぱり、そうなんでしょうかね。
けど盲目の恋や憧れって、感情は信仰に似てますよね。
そういう風に思わせてしまった、存在としての罪深さは大河にあるのかもしれませんが、みのりんがそういう感情に支配されるのも、自分の内面と比較してしまう、無垢なあの年代だからなのでしょうね。
>しかしその歪な関係性の無理が生じて崩壊していく
なんていうか、切なすぎる歪さですよね。
互いに家族としての結びつきと恋人としての結びつきを求めてしまうというのは。
大河が「家族」も「恋人」も欲してしま浮き持ち、竜児と実乃梨がそれに乗ってしまった気持ち、どれも心の流れ方としてはとても自然でありえる結果だと思います。
石田麦さんの推測どおりなら、その歪さに誰が気づいて、「それは違う」と修正しようとするのかって事なんでしょうね。
その筆頭候補は、今の所、亜美ちゃんなんでしょうか。
彼女も内面の葛藤を持っているけど、それをちゃんと整理できる冷静さ、なんていうかゴチャゴチャにしてしまう子供っぽさからは、卒業しているように見えます。
長文、失礼しました。
2009-02-01 日 01:18:40 /URL /拝読者 /
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>拝読者さん
どうも。
恋はたしかに信仰に似ている面があります。
しかし真実信仰を獲得した人は、なんていうのかな、それが自然に身体の基本的な直感のようなものになっているというか、朝が来れば夜が来るといったような、そういう疑う疑わない以前なのだと思います。
遠藤周作も似たようなことをいってますが、恋と愛はちがいます。そして、恋を愛に高める努力が求められているのかもしれませんね。
私は実乃梨はあまり無垢じゃないなと思ってます。というか、この作品には無垢な人はほとんどいません。いるとすれば、これはまちがいないですが、大河の父親がいちばん無垢です。
家族と恋人はたぶんイコールで結びつくものかもしれません。というか、結びつかないとたいてい破滅するのかも。
たぶん「その歪さに誰が気づいて、「それは違う」と修正しようと」はしないんです。修正しようとしなかったから、歪さに目をつむっていたから、自壊したんですよ。
「彼女も内面の葛藤を持っているけど、それをちゃんと整理できる冷静さ、なんていうかゴチャゴチャにしてしまう子供っぽさからは、卒業しているように見えます。」というのは、まったく同意です。卒業しようとがんばってしまう姿が、亜美さん、子どもだよとは、さすがにいえないけど。
2009-02-02 月 11:01:54 /
URL /石田麦 /
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どちらが強い?
実乃梨のように弱い自分を隠し取り繕う事のできる人か弱い自分を隠すことが出来ない人、ではどちらが強いと思いますか?
PS.いきなりですいません。
2009-02-02 月 17:45:17 /URL /ハッピー /
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>ハッピーさん
どうも。
「実乃梨のように弱い自分を隠し取り繕う事のできる人」というのはなんとなくわかります。
「弱い自分を隠すことが出来ない人」というのはあまりよくわかりません。
ただ思うのは、弱さを認めず弱さを別種の強さによって克服しようとするのは、おそらく内面は悲惨ですよ。
そして内面に弱さをもっていても、それを表に出すことを上手く調節できる人は、傍目には強く見えるものです。
ただ表面がどんなに悲惨でも、内面には恩恵があるかもしれないし、内面もまた悲惨な場合も当然あるでしょう。
2009-02-03 火 17:54:30 /
URL /石田麦 /
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