けいおん! 第11話「ピンチ!」
2009/06/12/Fri
「個人的には今回の回は感心させられた出来だったかな。まずその理由のひとつとしてはここに来てようやく本作が起承転結のある無理のないドラマを描いてみせたという点にあって、ドラマの内容の是非はともかくとしても、この登場人物たちの人柄の魅力と細やかなキャラクターの一挙手一投足をていねいに描くことを可能にする演出の自力が備われば、それほど複雑でなくて先に展開することのない平凡なエピソードといえど、ここまで画面に力が加わり見応えのある作品になるんだっていうことが、今回の「けいおん!」は見事に証明してくれたのだと思う。‥惜しむらくは、こういうお話がどうして最終盤に至ってやっと見られるくらいなのかなって思われちゃうとこになるのかな。たとえば今回のエピソードは断続的でない原作の‥四コマ作品である以上、物語として大局的な流れはあっても、場面場面ごとに必要とされるキャラのリアクションやその種の補填というのは映像化する際において必要不可欠の作業に思われる。ただ単に四コマのシチュエーションをそのまま切り貼りして映像にしても、それが魅力的な原作の昇華につながるのかなといえば、そんなことはないものね。それがどうしてかと考えれば、もちろん多種多様な理由は求められるだろうけど、そのひとつとしては作品の骨格が、つまり演出家の意図といったものが映像に反映されないからだと私は思う。‥なぜこの場面がここにこういう形で求められるのか。なぜこのキャラがここでこういう動作や発言をするのか。そういった諸々のことは演出の意図に沿って配置されるべきであり、それが為されないとき作品は成り立つべき根拠を失い、瓦解するのじゃないかなって、私は思うかな。「けいおん!」に関していえば、中盤からは明らかに何を描きたいのかが不明瞭になっちゃってた‥総合を、それぞれ妥当な理由をもって為されていたにちがいないのであり‥唯のギターを紬が権力でむりやりねじふせるのでなくて、あいだにお金を払おうって姿勢を挿入するだけで、原作の乱暴さは除去される。また唯の風邪引く理由に一段階挟んだことは、作品をクライマックスに向けて高揚させる意味において、決して無駄じゃない‥今回のお話は、だから、私はとてもよかったって評価するにやぶさかじゃないかな。‥もちろん、この期に至ってこの作品がオリジナル要素を多分に見せることには、賛否両論あって然るべきなのかもしれない。でも今まではこの作品については肯定も否定もできないくらいあいまいな完成度にしかすぎなかったように私には思われるから、それよりは今回のエピソードのように独自性をあらわしてくれたほうがよっぽどおもしろいように私には感じられるかな。もっと好き勝手つくってもよかったのに、って、ちょっと悔やまれちゃうくらいに、今回のお話は私てきによかった。」
「本作はこれまで破綻らしい破綻はなかったとはいえるけれど、しかし作品がどのような作品になるのか、どのような雰囲気の作品を目指していたかが途中からはまったく鮮明にはならなくなっていたのであり、それはたとえば前回の合宿のエピソードで、これ以上必要ないだろうというのにキャラクターの魅力を深めようとしていたことからも、その混迷ぶりがうかがわれるといったものなのでしょうね。そしてその混乱を生んだ最たる理由のひとつには、もしかしたら梓の存在があるのかしれないのであり、なぜなら梓を出したことによってそれまでただ単純にある閉じた空間においての閉じた関係性の変わり映えのしない日常を主に描くことに注力してきた本作が、いきなり音楽と仲間の関係性について見直さざるをえなくなったからで、梓が登場して以降の本作の状況は、ま、あまり評価できるものでもなかったのでしょうね。というのも、何をしたいのかがあまりに分らなくなっていたからでしょう。それに比較して今回は、少なくとも律と澪の微妙な間柄というテーマを中心に構成されていたために、視聴者としてはどこに注目して展開を追えばいいかが、非常に明瞭に伝わってきた。ま、これはいいことなのでしょうね。それまでの本作のぐだぐだっぷりに比べれば、よほど上等といったところでしょう。」
「そこで次に問題になるのが律と澪のつながりに関してなのだけど、私自身はとてもおもしろく見れたので、その私の個人的な興味と好みの点に限定して語るなら、今回のエピソードは、うん、すごく楽しかった。というのもたぶん今回の騒動の原因の一端には二年生になった当初の律と澪のクラスが離れちゃったっていうあの場面があったように思われるからで、それがなんでかなっていえば、あのとき澪ひとりが疎外されちゃったって感じてただけのように私は見たけど、その実、澪と離れたことに何より寂しさをおぼえてたのは、それが自覚されてたにしろそうでなかったにせよ、律本人にちがいなかったのじゃないかな。というのも律の澪の構い方には律自身はたぶん無自覚的であったろう頼りない澪を支えるのは自分しかいないって自負心と‥これがもっとも顕著にあらわれたのは一年のときの学園祭かな。ヴォーカルを務める澪の緊張をそれとなくほぐす律の気遣いは、よく描写されてた‥澪に対する一方的な、あるいは双方的な、依存心があったのであって、和と澪の実際にいっしょにいる場面を目撃したことにより、律にそれまでよく自覚的でなかったその思いが一挙に今回意識のうえにのぼったであろうことは、たぶん疑えない。そして澪に対する距離感のとり方が、その彼女に対する独占欲の自覚によって、わけわかんなくなっちゃったのが今回の律の澪への過剰なふるまいであったのであり‥これは律が体調を崩してたことも大きく関係してるのだろうね。そこらへん理由づけを今回の「けいおん!」はとても上手に処理してる‥あの痛々しささえ感じちゃう律の行動は、彼女の精神的な落ちこみをまったくよく映像として形に結実することに成功してたのじゃないかなって、私には思えたかな。なぜなら単純な嫉妬に駆られて参る繊細な心理の、その子どもっぽさをこそ、今回の律の姿は象徴してたにちがいないのであろうから。」
「以前、梓は澪に外でバンドを組まないのかと問うていたけれど、人見知りの澪がそんなことできるわけもないだろうことは唯たちには承知のうえのことだったのでしょうね。そして律もその点に関してはだから不安はなかったのでしょうけど、しかし軽音部の外の世界、つまりふだんの澪がどのように生活しているかについて、とくに和との関係性においてどうだかは、少し不安を心中に萌す部分があったということが、ま、今回のドラマの要諦であったのでしょうね。もちろんふつうの状態の、つまり体調が通常の律ならば今回のように極端な行動には出ないのでしょうけど、その過度なわがままな振舞いの原因として風邪をもってきたことは、違和感のない説明としては十分で良かったと評価できるのでしょうね。ま、幼なじみ故の微妙な関係性とその距離感を、今回の澪と律はよくあらわしてくれていたということでしょう。なかなか良かったかしら。この調子で最終回を、では期待するとしましょうか。どうなることか、楽しみよ。」
「本作はこれまで破綻らしい破綻はなかったとはいえるけれど、しかし作品がどのような作品になるのか、どのような雰囲気の作品を目指していたかが途中からはまったく鮮明にはならなくなっていたのであり、それはたとえば前回の合宿のエピソードで、これ以上必要ないだろうというのにキャラクターの魅力を深めようとしていたことからも、その混迷ぶりがうかがわれるといったものなのでしょうね。そしてその混乱を生んだ最たる理由のひとつには、もしかしたら梓の存在があるのかしれないのであり、なぜなら梓を出したことによってそれまでただ単純にある閉じた空間においての閉じた関係性の変わり映えのしない日常を主に描くことに注力してきた本作が、いきなり音楽と仲間の関係性について見直さざるをえなくなったからで、梓が登場して以降の本作の状況は、ま、あまり評価できるものでもなかったのでしょうね。というのも、何をしたいのかがあまりに分らなくなっていたからでしょう。それに比較して今回は、少なくとも律と澪の微妙な間柄というテーマを中心に構成されていたために、視聴者としてはどこに注目して展開を追えばいいかが、非常に明瞭に伝わってきた。ま、これはいいことなのでしょうね。それまでの本作のぐだぐだっぷりに比べれば、よほど上等といったところでしょう。」
「そこで次に問題になるのが律と澪のつながりに関してなのだけど、私自身はとてもおもしろく見れたので、その私の個人的な興味と好みの点に限定して語るなら、今回のエピソードは、うん、すごく楽しかった。というのもたぶん今回の騒動の原因の一端には二年生になった当初の律と澪のクラスが離れちゃったっていうあの場面があったように思われるからで、それがなんでかなっていえば、あのとき澪ひとりが疎外されちゃったって感じてただけのように私は見たけど、その実、澪と離れたことに何より寂しさをおぼえてたのは、それが自覚されてたにしろそうでなかったにせよ、律本人にちがいなかったのじゃないかな。というのも律の澪の構い方には律自身はたぶん無自覚的であったろう頼りない澪を支えるのは自分しかいないって自負心と‥これがもっとも顕著にあらわれたのは一年のときの学園祭かな。ヴォーカルを務める澪の緊張をそれとなくほぐす律の気遣いは、よく描写されてた‥澪に対する一方的な、あるいは双方的な、依存心があったのであって、和と澪の実際にいっしょにいる場面を目撃したことにより、律にそれまでよく自覚的でなかったその思いが一挙に今回意識のうえにのぼったであろうことは、たぶん疑えない。そして澪に対する距離感のとり方が、その彼女に対する独占欲の自覚によって、わけわかんなくなっちゃったのが今回の律の澪への過剰なふるまいであったのであり‥これは律が体調を崩してたことも大きく関係してるのだろうね。そこらへん理由づけを今回の「けいおん!」はとても上手に処理してる‥あの痛々しささえ感じちゃう律の行動は、彼女の精神的な落ちこみをまったくよく映像として形に結実することに成功してたのじゃないかなって、私には思えたかな。なぜなら単純な嫉妬に駆られて参る繊細な心理の、その子どもっぽさをこそ、今回の律の姿は象徴してたにちがいないのであろうから。」
「以前、梓は澪に外でバンドを組まないのかと問うていたけれど、人見知りの澪がそんなことできるわけもないだろうことは唯たちには承知のうえのことだったのでしょうね。そして律もその点に関してはだから不安はなかったのでしょうけど、しかし軽音部の外の世界、つまりふだんの澪がどのように生活しているかについて、とくに和との関係性においてどうだかは、少し不安を心中に萌す部分があったということが、ま、今回のドラマの要諦であったのでしょうね。もちろんふつうの状態の、つまり体調が通常の律ならば今回のように極端な行動には出ないのでしょうけど、その過度なわがままな振舞いの原因として風邪をもってきたことは、違和感のない説明としては十分で良かったと評価できるのでしょうね。ま、幼なじみ故の微妙な関係性とその距離感を、今回の澪と律はよくあらわしてくれていたということでしょう。なかなか良かったかしら。この調子で最終回を、では期待するとしましょうか。どうなることか、楽しみよ。」