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2012/08/28/Tue
私はお姉さんの友だちの間で人気があったらしい。なんで? 一度も会ったことないのに?と私が不思議に思うと、お姉さんは、――がかわいいからじゃないかな、私がよく――の写真を友だちに見せていたから、といった。お姉さんの言葉に私は少し恥ずかしい気持ちになったけれど、でもお姉さんはすぐ続けて、……だから、あんまり――の話を友だちにしないようになっていったんだ。卒業式の日に――が来てくれたら、私はうれしいけど、でも私の友だちにいろいろ知られちゃう。それが嫌だったから、私は――に卒業式に来ないでってメールしたの。私は、そういう奴なんだ。
お姉さんは次にこんなことをいった。――昔、――が私みたいな年下とつきあって楽しい?って意地悪なこと聞いたことあったよね。私、あのとき本当はどきっとしたの。いろいろ自分なりにも考えた。でも……けどね……。……そこでお姉さんは言葉を詰まらせて、私をじっと見て、そして何かを躊躇した。けど、こう私にいった。
――は、私を、買いかぶっていない……?
……私はお姉さんのその言葉に驚いた。本当に驚いた。……私は、唾を飲み込んで、そして、……私、お姉さんに嫌われると思っていた。お姉さんに無理やりキスして、だから……。でもお姉さんは首を振って、……前もいったよね、私は――の気持ちに気づいていたよ。あのとき、――の振舞いにびっくりしたのは本当だけれど、でもそれ以上に……ねえ、教えて。――は、私のことが好きなの?といった。
私は、お姉さんのことが好きです、と答えた。今度ははっきりとその告白の言葉を口にしていた。自分でも驚くくらい、凛とした声だった。お姉さんは、そっかといって、――それじゃ、恋人になろうか、といって、笑顔を浮かべた。
――私は、このときのやりとりを、このあと、何度も何度も繰り返し思い描くことになる。……当時は、お姉さんと恋人という関係になれたことがうれしくて、ただその喜びでいっぱいで、私はこのときのお姉さんとの会話の意味を考えることをしなかった。でも、私はこのときのお姉さんとのやりとりの意味を、お姉さんの気持ちを、よく考えなきゃいけなかったんだ。……お姉さんは、私のことを買いかぶっていない?と、私に尋ねた。それはつまり、お姉さんはこう私に問うていた。――お姉さんは、自分が私に釣り合わないんじゃないかと、ずっと悩んでいた。お姉さんは、自分じゃ私についていけないんじゃないか、自分じゃ私の恋人にふさわしくないんじゃないかと、考えていた。……そのことに私が気づくのが遅すぎたのが、つまり、今の私の放浪の理由なんだろう。私が過去をこうして思い出し、考える原因なんだろう。つまり、報いという奴なんだ。